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永田央(助教授) 分子研リポート1999 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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194 研究系及び研究施設の現状

永 田   央(助教授)

A -1)専門領域:有機化学、錯体化学

A -2)研究課題:

a) 金属錯体およびポルフィリンを用いた光合成モデル化合物の合成 b) 光励起電子移動を利用した触媒反応の開発

c) 高効率電子移動触媒を指向した新規金属錯体の開発

A -3)研究活動の概略と主な成果

a) コバルト(III) 錯体とポルフィリンが配位結合を介してつながった化合物を合成した。この化合物は溶液中光照射す ると容易に配位結合が切断され,溶媒(アセトニトリル)が配位したコバルト(III)錯体とポルフィリンの混合物と なる。暗所ではこの反応は極めて遅いため,ポルフィリンからコバルト(III)錯体への分子内光励起電子移動が配位 子交換を促進していることが示唆された。実際,この化合物においてはコバルト錯体の影響によってポルフィリ ンの蛍光が定常状態で10%ほどまで消光されており,電気化学測定の結果と合わせると励起一重項状態から電子 移動が起こっている可能性は高い。この系は原始的ながら「光励起電子移動によって生成した活性金属中心の反 応」を実現しており,今後より有用な触媒反応への展開の足掛かりになると考えている。

b) 光励起電子移動を利用して,ポルフィリンを触媒として用いる合成反応を開発した。触媒量のポルフィリンの存 在下で,キノンと電子ドナー・シリル化試剤の混合物を光照射するとキノンの還元的シリル化が進行する。照射 光の波長依存性を調べたところ,500 nm 以下の短波長領域ではキノンの励起状態も反応に関与するが,それ以上 の長波長領域ではポルフィリンの励起状態のみから反応が進行していることがわかった。生体内などの電子伝達 系では電子移動と共役してプロトン移動が起こるが,本反応では無水溶媒中でシリル基を「fancy proton」として 働かせて電子移動と共役させている。

c) ターピリジンとカテコールを分子内で結んだ配位子とその金属錯体を合成し,構造と反応性について調べた。ター ピリジン・カテコール・金属の3元錯体はルテニウムについて詳細に調べられているが,配位子交換が容易に起 こる第一遷移金属でこのような混合配位子錯体を合成することは一般に困難である。本研究では,同一分子内に ターピリジンとカテコールを持つ配位子を利用することで3元錯体を安定化することを試みた。コバルト・鉄・マ ンガンについて1:1の錯体が高い錯形成定数で生成していることが E S I-MS により明らかとなった。コバルト (III) の錯体については単離およびX線構造解析に成功し,ターピリジンとカテコールを結ぶメチレン鎖長の違いは 金属周りの構造にはあまり影響を及ぼさないことを示した。また,電気化学的挙動についても調べ,コバルト(II) への還元に伴って6番目の配位子(この場合は1−メチルイミダゾールを用いた)の交換と錯体の構造変化が同 時に起こっていることを示した。

B -6) 学会および社会的活動 学協会役員、委員

日本化学会東海支部代議員(1999-).

(2)

研究系及び研究施設の現状 195 C ) 研究活動の課題と展望

生体内で多くの反応がワンポットで同時進行しているのは,生体系の空間的・時間的な不均一性によるところが 大きい。これまでいわゆる「光合成モデル系の構築」として化学の立場からアプローチされてきた研究は,こと 光励起電子移動に関する限りこの不均一性を分子レベルで模倣することに主眼をおいてきたように感じられる。し かしながら,触媒反応の開発というセンスでアプローチしてみると,完全な均一系でもうまく条件を選べば多数 の同時進行する反応を手なずけることが可能である,ということがわかってきた。この上に空間的不均一性をう まく導入できれば,より複雑な反応系を設計することができるであろうと考えている。このときもまた,さまざ まな不均一系触媒反応のノウハウが参考にできるに違いない。こういったアプローチを進めていくことで,化学 と生物の間の大きなギャップを少しでも埋めて,新しい「生体関連化学」を打ち立てていきたい。

参照

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